研究室の音楽

仕事中は研究室で音楽を聴いています。

EL34シングルアンプ9:LTspiceの利用⑤

このオリジナル(を3結にした無帰還)の回路で0.8p-pの入力を入れた場合、クリッピングのないきれいな出力に見えますが、出力は+側は5.0Vまでしか振れないのに対して-側は-5. 48Vまで振れます。いわゆる2次歪(+高次歪み)です。ロードライン上でグリッド電圧が-側に振れた場合(出力は+側に振れます)の方が+側に振れた場合よりもプレート電圧・電流の動きが小さくなることが主な原因です。プレート曲線の間隔が右に行く方が狭くなっている形で現れます。EL34のような多極管を3結で使った場合は300Bなどの3極管をそのまま使うより、これが顕著になるそうです。しかしここで、そもそも論ですが真空管をなぜアンプで使うかについては、そもそもこの2次歪が心地よいからだという考えがあるそうです。半導体(やそれを使ったIC)では真空管よりもはるかに直線性は悪いですが、有り余る増幅率を負帰還にまわして、真空管よりもはるかに低歪の回路が作れます。何が要点かというと真空管をわざわざ使うという以上、この2次歪を全く消す必要はないと思われますし、どれくらい残すのがいいのかというのもわからないのだろうという点です。それでも今回のこの差は少し大きいので検討してみましょう。まず、初段についてその出力を見てみます。結合コンデンサの後、EL34の第1グリッドの前にカーソルを合わせて電圧を出力させます。(シミュレートしなおす必要はないです。)

前段の出力曲線


この前段は+16.38V、-16. 74V動いています。その差は片側振幅の2%ほどです。出力時には8%ほどあったわけですから初段はさほど歪を生み出していません。6SL7は直線性に優れた素子ということでしょうか。実はこれはいいこととは単純には言えないようで、なぜなら真空管回路は反転増幅なので初段で生まれた歪は出力段の歪を打ち消す方向に動きます。今回は初段の歪は出力段の歪を打ち消すには至っていない、つまり、初段での歪はもっと大きい方がよいと考えることもできるわけです。改良ではこの点を考えに入れます。