研究室の音楽

仕事中は研究室で音楽を聴いています。

EL34シングルアンプ17:回路図と特性

さて、3結、5結と改良を検討した結果の回路図は以下の通りです。

回路図

3結(無帰還)の場合の予想される出力と歪率は以下の通りです。実測ではなくLTspiceのシミュレートです。(左上は入力(rpm)対出力(W)、残り二つが出力(W)対全高調波歪のグラフです)

3結時(無帰還)

0.7Vmax(0.5rpm程度)の入力で出力2.4W、歪率1.3%です。1W出力の時の歪率は0.8%ほどです。

次に5結(帰還抵抗2kΩ)の時の特性です。

5結時の特性

3結、5結とも出力を絞って、与えられた条件で歪率を低くする改造ですが、5結はそれが顕著となっています。この条件下(普通のリスニングであろう入力条件)では改造前に比べると110V入力の時と比べても特性は抜群に良くなっています。

EL34シングルアンプ16:5結の検討④

このような電源の改造によりEL34のG2電圧は約280Vとなります。データシートから最大G2電圧(Vg2max)は500Vで問題ありません。Ipは約64mA, Ig2は約9.5mAとなります。6n9p(6SL7)のプレート電圧も246で問題ありません。この時の入力(0.4Vmaxから0.8Vmax)までを示します。

改良後

改良前



以前のグラフと比較してもらうとわかりやすいですが、改良前には0.5Vmaxの入力ですでにクリッピングしたいたものが、0.8Vmaxでも問題なく動いているのが分かります。

EL34シングルアンプ15:5結の検討③

さて、G2電圧を上げるよう改造していきます。まず、オリジナルではチョークから出たB電源がまず、出力トランスを通ってEL34に供給されるために分岐し、その後10KΩを通ってEL34のG2と初段のプレート抵抗(現在は39KΩ)に分岐ましす。つまり、この10KΩをいじればG2電圧を下げられます。一番簡単なのはG2への供給はこの10kをスキップしてしまうことです。プレート抵抗より若干高いG2となるわけですが、G2損失もG2最大加圧も超えていませんので問題ないと思います。しかしながら、しらべてみますと、この方法では別の問題、ハムが発生する可能性があります。電源電圧にハムなどの変動があるとそれがもろにG2にかかります。G2はグリッドですからコントロールGほどでないにしろ、これが増幅されてプレート電圧に変化を起こしてハムとなるわけです。ここで抵抗(とコンデンサ)を入れておけばフィルタとなって電源のハムを軽減できます。実際、LTspiceで検討しても1kΩを入れるだけで増幅されるハムは1/10程度にまで下げれます。こういう検討ができるのもとても便利です。この結果より、まず1kΩを通してデカップリングしたのち、G2へと接続し、初段プレートへはその後9.1kΩを通って電圧を供給することとしました。その際ついでですので、ここから左右に分けて(コンデンサも追加し)、電源の安定と左右のセパレーションの向上も目指すこととします。

5結での電源の振り分け

これらの電源は3結でも同じように使用しますから、3結の回路でもシミュレートしなおして問題がないかもう一度確認しました。

EL34シングルアンプ14:5結の検討②

第2グリッドの電圧がどう影響するか見てみましょう。LTspiceを使えば次の回路でV3の値を指定すればその条件でのプレート曲線が書けます。

まず、G2=250の時、これはデータシートに乗っている曲線と比較してプレート電圧100V以上はとてもよく再現していると思います。

G2=250V

これに対してG2=180Vの時は

G2=180

全体に電流は低くなりますが、特にバイアスが20Vより深くなると何も起きません。つまり出力+の方にはこれ以上増幅しようがなくクリッピングするという出力解析の結果と整合性があるものとなります。G2の電圧を上げる。これがまず手を入れるところのようです。それには電源をいじる必要があります。
このような解析はデータシートからだけはなかなかに難しいと思います。データシートには(EL34の場合)G2=250のプレート曲線しか載っていないからです。それがLTspice(と中林氏のライブラリ)を使用すれば180Vの曲線がいとも簡単に手に入れることができます。皆さんも一度ご自分のアンプの回路をこれで試されてみてはいかがでしょうか。

EL34シングルアンプ13:5結の検討①

おそらく一番よく使うであろう3結については解析・検討を行い、途中まで改造もして効果も確かめました。次は5結について考えます。こちらが本当のオリジナルの回路ですね。改良した後3結、5結をスイッチで切り替えられるようにしたいと思います。負帰還も必然的にいくつか選べるようにすると思います。

まず、オリジナルの5結に0.4Vmaxから0. 1Vずつ増やした入力を入れたときの出力波形をみます。電源は100V、帰還抵抗はオリジナルの2kΩの時です。0. 6Vmaxではもう上がクリッピングしています。下はまだ余裕がありますが、上が5Vで頭打ちになるのに7V, 8Vと上がっていき歪がどんどん増える状況です。あまりうれしくない状況です。これは100V入力で顕著ですが116V入ったときも状況は大きくは変わりません。メーカーのいう13Wは(4Ω負荷なら)出るには出るでしょうが出るだけと思います。

次に3結の時に改造した定数を用いて5結にした場合です。

まあ、ダメですね。つまり、3結で調整した回路をそのまま使って(負帰還を入れても)も5結の改善は認めないということで、ここら辺のコンパチブルを考えながら回路をいじることになります。

ここで少し問題かと思われるのは第2グリッドにかかる電圧が低いことです。100V入力では185V程度しかありません。これについて考えていきます

EL34シングルアンプ12:3結での仕様決定(EL34バイアス)

さて、3結状態での改造計画もいよいよ大詰めです。出力段の調整を目指したいのですが、電源トランスや出力トランスを変えないとすると電源や出力段の交流負荷を変えるのはなかなか難しいです。実際100Vでの駆動ですとプレート電圧がもう少し高くてもいいなと思いますが、今回はこれは仕方なしとしましょう。そうすると残るのは自己バイアスのカソード抵抗となります。(バイアス状態の変更です。)

いろいろな作例や資料を見てみると普通は出力管の出力を最大とするように第一グリッドが0Vの時例えば40mAプレート電流が流れるのなら、動作点は20mA付近におき、それに見合うバイアスをかけるのが普通と見受けられます。しかし、実際には電流が0になるまでバイアスはかけれませんし、2次歪がどんどん強くなります。今回は0.8Vmax程度の入力で歪まないが目標で、実際にこれくらいの入力で歪まず2W強出ている計算になっています。従ってロードラインを広く使うのではなく、左の方の2次歪が比較的小さいところを使う、つまりバイアスを浅くすることとします。これには短所もありまして、この2W強を超えると急激に歪が増大することとなります。製品ではとても使えないでしょうが、私の環境を考えればこちらの方がいいように思えます。ただ、あまり見ない調整なので実際どれくらい効果があるのかシミュレートしてみましょう。カソード抵抗をデフォルトの300Ωと220Ωの時の0.7Vmaxを入れた際の出力です。

緑220Ω、青300Ω


220Ωの方がパワーが出ているにもかかわらず、歪率は220Ω 0.7468011%、300Ω 1.031856%と220Ωの方が結構低くなります。3結状態でのチューニングは以上の条件で行うこととしました。次回からは5結の状態です。この状態によってはまたチューニングを変更するかもしれません。

EL34シングルアンプ11:改造2

EL34アンプの解析はまだまだ続けていきますが、ここで一度現在までの方針を実機で試してみたいと思います。特に不安がある入力感度について確認しておきたいということが大きいです。あとで述べるかとは思いますが3結での改造では現在まで検討した6SL7(6n9p)のプレート、カソード両抵抗の他にEL34のカソード抵抗もかえるつもりです。ただこちらは2Wの耐圧が必要で部品を注文しないといけません。5結での解析・改造も考えているのですが、こちらで第2グリッドに入れる電圧を変えることからここでも2Wの抵抗が必要と思われ、合わせて注文したいのでまだこれらは手元にありません。そこで6SL7のプレート、カソード両抵抗(これらは1/2Wで十分)だけを手元のものと交換して、特に入力感度が適当かどうかを中心に試してみました。

まず、感度ですが通常使うラズパイとDACの出力に於いてはボリュームを全開にしたら結構うるさいといった感じでした。オリジナルやいつも使っているアンプと比べると低いですが実用上は問題ないかなと。これ以上パワーを求めるならプッシュプルや半導体、あるいは今回のを5結にといった選択肢になると思います。自作のスピーカーよりB&Wの方が感度がいいのでこちらの方があっているような感じです。それよりも、出てきた音の実際の聴感ですよ。たった2つの(ステレオで4つ)の抵抗を、しかもそこらに転がっているのに変えただけなのですが、全く別の鳴り方です。今まで低音がそこそこなのはシングルだし安物だしね。サブウーファーがあるからいいよね。と思っていました。すみませんでした。私の間違いでした。B&Wが実によくなります。しかも非常に心地いい。定数一つでこんなに変わるんですね。俄然やる気です。