研究室の音楽

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NFJ TUBE-00Jの回路解析、修理、改造8。改造③ カップリングコンデンサ①

さて、前回長々とお話ししましたが、それを踏まえてカップリングコンデンサの変更を考えてみましょう。カップリングコンデンサは基準電圧が違う回路を直流的には遮断し、音楽(交流)信号だけを通すもので、音質への影響がとても大きいとされています。TUBE-00Jにおいて(Rチャンネル)は入力(0V)- C206 - オペアンプ部(5V)- C303 - 真空管入力部(0V) - 真空管真空管出力部(70V) – C302 - 出力(0V)となっており、つまり、カップリングコンデンサは片チャンネル当たり

入力カップリングコンデンサ C206 (10uF 電解コンデンサ)

カップリングコンデンサ C303(1uF フィルムコンデンサ)

出力カップリングコンデンサ C302(1uF フィルムコンデンサ)

の3つとなります。上位機種のTUBE-00J unlimitedではそれぞれのコンデンサが上位の品質が良いものとされるものに交換されています。ネット上の改造例でもこれに準じた改造がほとんどです。さて、この3つのうち仲間外れは明らかにC206の電解コンデンサです。電解コンデンサは各メーカーがオーディオ用のものを出しており、それぞれの色があるといわれる部品で、ネット上の改造でもここを東信工業のUTSJ 16V 10uFという高級品やOSコンと呼ばれるすこし性能が良い電解コンデンサもどき(ただしOSコンは漏れ電流、つまり、遮断効果が破綻することがあり、はんだ付けでひどくなることから避ける方も多い)にする例が多いようです。しかし、電解コンデンサで音が変わってしまうということは電解コンデンサカップリングコンデンサとしてはよくないということを示しており、アンプを作るときはできるだけ電解コンデンサを使わず、他のコンデンサと同様、フィルムコンデンサを使うことが多いです。少なくとも私はそうしています。では、ここだけなぜ電解コンデンサかというと10uFという容量が問題なのです。10uFのフィルムコンデンサは存在しますが値段が高いのです。WIMAのMKS2というオーディオでよく使われるものは500円以上します。左右で1000円、とても4000円未満のラインアンプに搭載できるわけがありません。これに対して電解コンデンサでは上記のUTSJ 16V 10uFでさえ、1個166円です。しかし、フィルムコンデンサでも容量が小さいものなら値段も張りません。MKS2の2.2uFが250円、1uFなら133円程度です。ではなぜそれを使わないかというとこのコンデンサと抵抗でハイパスフィルタが構成されるので、容量が小さいものを選んでしまうと低域の周波数特性が悪くなってしまうのです。それをシミュレーションしたのが図です。デフォルトの10uFと2.2uF、1uFでの周波数特性です。(6J1装着時、ボリューム位置を22kΩ、パワーアンプの入力インピーダンスを20kΩとしています。帰還部のコンデンサは適当ですので高周波の特性は無視してください。)

入力カップリングコンデンサ(C206)の容量と周波数特性

デフォルトの10uFの時3dB下がるカットオフ周波数は9Hz、優秀です。容量を絞ると低域の特性が悪くなるのがよくわかると思います。ここからはフィルムコンデンサにするためにどこまで性能を悪くするかということになりますが、まず、2.2uFにしても3dB下がるのは10Hz、あまり変わりありません。これから、フィルムコンデンサ2.2uFにしてもよいように思えます。

そして、前回の話から、低域がいらないと考えると1uFでも十分なようです。例えば40Hzのところでは10uFと違いはありません。ここまで落とせばフィルムコンデンサーでも普通に転がっている部品が使えます。この結果はパワーアンプの入力インピーダンスに左右される(低いほど低域の周波数特性が悪くなる)のですが、私のパワーアンプで入力インピーダンスが最も低いのは先日テストに使ったTDA7377アンプの15kΩと思います。また、前回のシステムを見ていただけるとわかりますが、セレクターを使ってパワーアンプは並列につないでいません。(並列につなぐと電源が入っていなくても各アンプのインピーダンスが並列となって全体のインピーダンスが極端に下がる。)ですので、私のシステムではこのシミュレーション結果を使って、TUBE-00Jの低域の周波数特性を改悪することにします。実際には周波数特性はもう少し落としてもいいと思ったのでC302も0.22uFのメタライズドポリプロピレンフィルムコンデンサに変更します。(たくさん在庫があったので)出力コンデンサはNFJで売っている指月製の1uFでもいいのですが、これではTUBE-00J Unlimitedと同じでつまらないので、パナソニック製の1uFのメタライズドポリプロピレンフィルムコンデンサとします。(指月のも試してみたいと思っています。)こうやって部品代を浮かせて差額で新しい種類の真空管を試した方が楽しいかなと。次回は実際の交換です。