研究室の音楽

仕事中は研究室で音楽を聴いています。

EL34シングルアンプ18:KT88への換装検討

本アンプは自己バイアス方式ですのでEL34をそのまま他の真空管に差し替えれる可能性があります。KT77,6CA7 は問題ないでしょうが、5極管でよく使われるKT88についてはいかがでしょうか?今回は特にプレート電源が推奨の条件よりかなり低いです(300V以下、600Vまで行けるのに)のでKT88を挿して真空管が壊れるということはおそらくなく、音も問題なく出ると思いますが、それによるパフォーマンスへの影響はいかほどのものでしょうか?

そこで、3極接合についてEL34用に決定した回路でシミュレートしてみました。歪率や出力の特性はEL34の時と変わらなかったのですが、(むしろ驚いたことに歪率では有利、出力は控えめ)プレート電圧が285V、バイアスが21.6V でプレート電流が100mA弱が流れることになります。残念ながら電流が多すぎて電源トランスの容量をオーバーしまい使えません。これはカソード抵抗を300Ωから220Ωに変更したためで300Ωなら大丈夫そうです。そこで、改めてEL34の時の300Ωと220Ωの時の差をきちっとシミュレートしなおしました。

カソード抵抗の影響

青い線が220Ω、オレンジの線が300Ωです。右の図は出力2.5Wまでの部分を拡大したものです。2W強までは220Ωの方が有利ですが、その後は300Ωの方が歪率は小さくなってその後急増します。これは220Ωの方がロードラインの左側に偏った動きになるので(2次)歪が小さくなり、300Ωの方がロードラインを広く使う設計(こちらが普通の設計と思います。)で小信号時の(2次)歪が大きくなるからだと解釈できます。今回は通常に聴く範囲で歪を低くすることを目的としていたので220Ωの結果は狙い通り、いけています。右のグラフでは結構な差となって表れていると思います。しかし、220ΩではKT88はトランスを換装しないとさせません。しかし、もしトランスを換装するならはKT88は(実はEL34も)もう少し高い電圧の方が設計上の自由度が高くすることができるので、結局全く新しいアンプにした方がよくなります。今回はEL34でのパフォーマンスを優先しカソード抵抗を300Ωのままにするのは見送ります。KT88を挿すときにはカソード抵抗を300Ωに戻せばいいので、固定バイアスの調整のようにKT88の時はスイッチで切り替えることを検討します。上の結果からもEL34の時も少し高出力が必要なときはこのスイッチが役に立つかもしれませんね。(小入力時の歪は悪化します。)このように詰めながら定数を決定できるのでシミュレーションはとても便利です。