研究室の音楽

仕事中は研究室で音楽を聴いています。

久々の修理:Tube-01J改造品

個人的な節目も過ぎ、仕事もようやくひと段落つき、本当に久しぶりにはんだごてを握りました!調子を崩してから8か月くらいたっている?もっとか。

リハビリとしてTube-01Jの2台を修理しました。どちらも以前からの改造を施したものです。改造の手順もそういえば途中でした。また、機会を作って載せたいと思います。

ampaudio.hatenablog.jp

1台目は右のイルミネーションのLEDがつかないというもの

LEDの交換ですが、カソードとアノードどちらが足が長いかも忘れていて確認しながらです。まだ、この基盤は前の方がすでに改造を入れられていて抵抗はDALEが入っています。その際、少し基盤が痛んだのか銀線で配線してあります。

 

2台目は改造した後で右チャンネルの音が出ないというもの。テスターで探っていくと真空管の足の電圧はすべて想定通りで、改造した昇圧系やフィルター関係は大丈夫そう。つぎに入出力を見るとRチャンネルのボリュームへの入力がない。リレーから出てくる部分とRチャンネルだけつながっていませんでした。個々の部分のはんだをやり直しましたが、症状は変わらないので被覆線を使って結線しました。

これで無事、音が出ました。久しぶりにTube-01Jの音を聞きましたが、素直で改造分は力強くなっており大変気持ち良いです。ここまでで、小一時間くらいかかりました。リハビリはこんなもんでしょうか。またぼちぼちいじっていきたいです。

 

NFJ TUBE-01Jの修理・改造11:改造手順②

次に、カップリングコンデンサと信号に直列の抵抗を交換します。今回カップリングコンデンサはITWがついているので出力カップリングコンデンサはそのままにしておきます。もちろん好みで替えていただければいいと思います。入力はWIMAのMKS2 1.0uFに交換しますが、これはサイズを小さくして、リプルフィルターの基板を入れるためです。

入力コンデンサを変更したところ(黄色矢頭)

抵抗は4.7kΩ2本と1kΩ2本を交換します。-6dBのアッテネータを使用する気がないのなら1kΩの交換は不要です。1kΩは基板上にここしかないと思いますが、4.7kΩはプレート抵抗も4.7kΩです。間違えないようにしてください。

4つの抵抗を外したところ(黄色矢頭)


気になる人はこれのプレート抵抗も交換し、自己バイアスのためのカソード抵抗も交換されるといいかもしれません。私も以前交換したことがあるのですが、私の耳ではその二つの抵抗の交換の差を実感することができなかったのでそれ以後は飛ばしております。私は抵抗はBISPAのLGMFSAを使っていますが、DALEのものも持っています。お好きなようにされるのがいいと思います。注意点としては4.7kの方はフォーミングして浮かしてつけてしまうとリプルフィルター基板と干渉します。

NFJ TUBE-01Jの修理・改造10:改造手順①

何人かの方からNFJの真空管ラインアンプの改造についてお問い合わせをいただきました。ありがとうございました。今までのブログでは改造手順の細かいところまではご紹介できませんでしたが、今回TUBE-01Jについて、もう少しその詳細をお示しできたらと思いもう一度まとめてみます。TUBE-01Jを選んだのは基本的にはスルーホールデバイスで構築されているのと、買われているかが多いこと、そして、電圧が高くないという安全性をかってのことです。ここまで行ってなんですが、NFJも改造はしないでねと表向きは言っておりますし、お約束として改造は自己責任でお願いできればと思います。ここでのまとめは改造手順の私のための詳細な記録という位置づけでお願いいたします。

必要なものは一般のはんだ付けの工具の他に、ハンダ吸い取り器(手動のものがいいと思います。基盤が弱いので電動は傷つけることが多いです。)、ハンダ吸い取り線、あと低融点ハンダ(私は自作しています)はないと昇圧基板を外すのは難しいと思います。

1.躯体のオープン

内部にアプローチするために躯体をあけていきます。まず、前面の6角ねじ(2.5)4つを外し、後面のRCA端子の+ねじ(2)2つ外し、基板を引き出します。今回の基板はカップリングコンデンサがITWですね。あたりでしょう。

躯体のオープン

2.整流ダイオードの交換

TUBE-01Jの特徴でもあり、同時に泣き所でもあるのがB電源の低さです。おそらくACアダプターで駆動する真空管アンプというのがポイントですが、このためB電源の電圧を適切なレベルまで上げるのに課題があります。TUBE-01Jではスイッチングのノイズを嫌い、交流化したものをトランスで昇圧し±電源としています。この電源を安定化するためにはどうしてもさらなる電圧低下を引き起こすので、それを中和するためにこの後の整流回路のダイオードをVfの小さいショットキーバリアダイオードにして少しでも電圧を上げるという改造です。この部分だけチップ部品の交換となります。ショットキーバリアダイオードは耐圧に注意します。ここではSS210を使用しています。この位置にある整流ダイオード4つを外し、ショットキーバリアダイオードに取り替えます。(極性に注意してください)

昇圧基板手前の二つのダイオードを交換したところ

今回はそばのコンデンサがITWですので大きくなく干渉しませんが、青いBCコンポーネントであれば一度外してから交換した方がよいかもしれません。また、この昇圧基板を外してからかえることも考えられますが、基板を固定する台がないとやりにくくなります。これにより写真のようにわずかにB電源の電圧を上げることができます。

改造前(左)と後(右)のB電源電圧(真空管を入れた定常状態)

わずかですので、もし、チップ部品の交換に自信がなければこのステップは省略ことも可能と思います。

今日はここまで。

 

EL34シングルアンプ21:完成・試聴

初めての真空管パワーアンプ・EL34シングルアンプの改造が終わりました。


このアンプでの改良した点は

1.100Vでの動作

2. 小から中出力での低歪性化

3. 3結と5結を切り替えられる。

4. KT88に差し替えられる。

といったところでしょうか。このアンプを改造した経験からの感想は真空管アンプは回路は簡単ですが、こんなにもいじれる部分があるのかということです。今回は特に2の目標があったので明確に改造することができましたが、他の目標、例えばパワーを優先するなら全く違った設計になったと思います。こういうアンプがいいなというのに窮屈ですが合わせていけるのは面白かったです。また、LTspiceによる検証は極めて強力でこれがなければ今回のセッティングはありえなかったでしょう。実際動作点は両段とも普通とは少し違うものと思います。ずぶの素人がここまでできたのはひとえにこのシミュレータのおかげです。

出てきた音ですが、まず、5結も問題なく聞けるようになりました。くすんだ感じはかなりなくなってパワーがあるので楽しく聞けます。これに対して3結は基本的にボリュームをほぼ全開で聴くことが多いですが、これもとても気に入りました。何より、眠っていたアンプが第一線に復帰できたのは何よりうれしいです。あと聴いていると気持ちよくなって寝てしまうのは困ったことです。

このために買った虎の子KT88(ムラ―ド)も試してみました。

KT88で


球を変えても問題ないとあらかじめわかっているので安心して楽しめます。スピードがある音でこれもとても気に入りました。5結は特にいい。KT88もさせるようにしておいてよかったです。

KT77(JJ)もEL34のセッティングで聴いてみましたがこれも明るめで一番気に入ったかもしれません。前段も6n9pと6SL7と変えれるのでこれだけでも結構楽しめます。

私の初めての真空管パワーアンプは中国大陸からやってきたやってきたお安めのものでした。しかし、最終結果から見ると改造のベースとしては十分と思います。パワー重視の背伸びしたセッティング(しかも110V)でしたがちょっとした調整でどんどん音が変わっていくのは新鮮でした。真空管の勉強にもなって、改造・試聴ととても長い間、大変楽しめました。もう一つ買ってまた別のチューニングをしてみようかな。

EL34シングルアンプ20:改造

さて、今までの検討を活かすべく、EL34シングルアンプの改造を開始しました。出力管、整流管は印字が後ろになっていしまう配置でしたのでついでにそれも直します。

まず、3結か5結、EL34とKT88、帰還量と無帰還、のプレート電圧の切り替えの3つのスイッチを取り付けました。前の二つがon-on、 帰還のものがon-off-onです。これらのトグルスイッチの穴あけですが、ステンレスの加工は大変でした。ポンチを打つのもドリルを扱うのもかなり力をかけなくてはならず結構怖い感じです。まず2㎜でガイドの穴をあけてから6㎜に替え、最後はリーマーとやすりで仕上げました。この3つのスイッチを固定してから配線の変更をしていきます。


f:id:medakazebra:20230316171416j:image

f:id:medakazebra:20230316171419j:image

まず、抵抗の換装です。今回6SL7の位置変更はしませんから、前段のカソード抵抗1kΩは位置をそのままに4.7kの替えます。プレート抵抗は同様に82kを39kに替えます。このプレート抵抗は左右が同じ電源の10kΩに接続されており、その部分でEL32の5結の時の第2グリッド接続されています。今回この10kΩを1kΩに換装し、前段との接続は外しておきます。この1kΩの横2つのラグ端子が開いているので、ここに左右別々に9.1kΩの抵抗を新たに設置し、先ほどの前段の接続をつなげます。個々の部分に新たに左右独立の24uFをかませますが、これはラインアンプの時に浮いて12uFのコンデンサ4つをユニバーサル基板上に組んでスズメッキ線でここの部分に接続と固定を行いました。


f:id:medakazebra:20230316171543j:image

f:id:medakazebra:20230316171546j:image

次にEL34まわりの接続を外して、この真空管端子を180度回転させて配線をし直して、、、と続くのですが冗長なので省略いたします。スイッチの取り回しで配線が長くなるのでハムや雑音のことを考えながら配線するのと、端子の180度回転は思っていたよりも面倒で3時間ほど費やしたかと思います。テスターで結線と取り付けた3つのスイッチによる回路の抵抗値の変化を確認したのち、真空管を挿して電源を入れて異常がないのを確認。いよいよ音出しで、テストスピーカをつないで正弦波を入れたところ、問題なく音が出ました。各スイッチを変えると(この時電源は切りましょうね)予想通りの音量の変化が出ます。素晴らしい。ここで周波数特性を計っておくべきだったかもしれませんが、せっかく音が出たのですから、早く音楽を聴きたいですよね。ということで、システムに入れて試聴です。

EL34シングルアンプ19:回路決定

カソード抵抗を切り替えてKT88も使えるようにした最終の回路図です。これで改造していきます。

回路図

せっかくなのでカソード抵抗300Ωの時のKT88の特性も載せておきます。まずは3結です。

KT88 3結


KT88に合わせたチューニングではありませんが、大出力にならなければそこそこと思います。これはEL34の時と同じ傾向ですが、さらにはっきりしていますね。次に5結です。

KT88 5結

結構素直な特性に思えます。KT88はギターアンプでも歪みにくいといわれているそうで、それが出ている感じですね。いずれにしても、使えそうです。これで回路はFIXとします。

EL34シングルアンプ18:KT88への換装検討

本アンプは自己バイアス方式ですのでEL34をそのまま他の真空管に差し替えれる可能性があります。KT77,6CA7 は問題ないでしょうが、5極管でよく使われるKT88についてはいかがでしょうか?今回は特にプレート電源が推奨の条件よりかなり低いです(300V以下、600Vまで行けるのに)のでKT88を挿して真空管が壊れるということはおそらくなく、音も問題なく出ると思いますが、それによるパフォーマンスへの影響はいかほどのものでしょうか?

そこで、3極接合についてEL34用に決定した回路でシミュレートしてみました。歪率や出力の特性はEL34の時と変わらなかったのですが、(むしろ驚いたことに歪率では有利、出力は控えめ)プレート電圧が285V、バイアスが21.6V でプレート電流が100mA弱が流れることになります。残念ながら電流が多すぎて電源トランスの容量をオーバーしまい使えません。これはカソード抵抗を300Ωから220Ωに変更したためで300Ωなら大丈夫そうです。そこで、改めてEL34の時の300Ωと220Ωの時の差をきちっとシミュレートしなおしました。

カソード抵抗の影響

青い線が220Ω、オレンジの線が300Ωです。右の図は出力2.5Wまでの部分を拡大したものです。2W強までは220Ωの方が有利ですが、その後は300Ωの方が歪率は小さくなってその後急増します。これは220Ωの方がロードラインの左側に偏った動きになるので(2次)歪が小さくなり、300Ωの方がロードラインを広く使う設計(こちらが普通の設計と思います。)で小信号時の(2次)歪が大きくなるからだと解釈できます。今回は通常に聴く範囲で歪を低くすることを目的としていたので220Ωの結果は狙い通り、いけています。右のグラフでは結構な差となって表れていると思います。しかし、220ΩではKT88はトランスを換装しないとさせません。しかし、もしトランスを換装するならはKT88は(実はEL34も)もう少し高い電圧の方が設計上の自由度が高くすることができるので、結局全く新しいアンプにした方がよくなります。今回はEL34でのパフォーマンスを優先しカソード抵抗を300Ωのままにするのは見送ります。KT88を挿すときにはカソード抵抗を300Ωに戻せばいいので、固定バイアスの調整のようにKT88の時はスイッチで切り替えることを検討します。上の結果からもEL34の時も少し高出力が必要なときはこのスイッチが役に立つかもしれませんね。(小入力時の歪は悪化します。)このように詰めながら定数を決定できるのでシミュレーションはとても便利です。